楽しく覚える高分子 〜糖類〜
この記事は、高校化学 「高分子化合物」 が既習の方を対象に書いています。
お久しぶりです!
中間テストも3日目まで終わり、ラストスパートになりました。
それなのになぜ勉強もせずにブログなんて書いているのかという話ですが…まあ、三連休ですし((^-^;
いやいや、それもあるんですけども、この記事で書きたい話題は今回のテストに直結していて、自身の理解を深める目的でもあり、そしてなおかつ、もしかしたら、今これで苦しんでいる理系の皆さんの一助となるかもしれない(?)お話です。
では、本題に参りましょう。
今回のテーマは!
「糖類を少ない労力で楽しく覚えよう!!」
です!
糖類といえば、有機化学の山場である 「高分子化合物」 で扱われる、主な物質6種類のうちの1つとなります。
結合が1箇所違うだけでグルコースがガラクトースに変わってしまったりと、とにかくややこしいですよね。
そんな糖類ですが、化学式が難しいために難しく見えているだけで、キャラクター化してみれば、案外単純なのではないか?と思いました。
キャラクターの作り方はこんな感じです。
頭のリボン🎀はエーテル結合 -O-、手足の〇はヒドロキシ基 -OH を表しています。ただし、-CH₂OH に関しては、ヒドロキシ基を含んでいますがここでは便宜上省略しています。
手足のヒドロキシ基は、上側に出ているか下側に出ているかも区別しており、細かいけれど実はこの手足の向きによって糖の名前が変わってくるので、よく見てくださいね。
では、キャラクター紹介を始めます!
単糖類
一般式 :
別名ブドウ糖。
呼吸や発酵に使われる。
還元性あり。六員環構造。
グルコースに限らず、以下で紹介する単糖類はすべて、左手が下を向いているものがα、上を向いているものがβと呼ばれる、と覚えるとわかりやすいでしょう。
グルコースは、固体の状態ではすべてα型をしています。
しかし、ヘミアセタール構造をもつため、水に溶かすと環が切れ、それがもう一度繋がると、もとのα型に戻るか、β型に変化します。
※ヘミアセタール構造とは
環が切れたものは鎖状構造と呼ばれ、グルコース水溶液中では、α型と鎖状構造とβ型の3種類が共存し、平衡状態になります。
・フルクトース
別名果糖。
糖類の中で最も甘い。
還元性あり。六員環構造と五員環構造どちらもある。
固体の状態ではすべてβ型の六員環構造をしています。ヘミアセタール構造をもつため、水に溶かすと環が切れて鎖状構造になったりする、というところまではグルコースと同様なのですが、それがもう一度繋がると、α型になるのかな?と思いきや、五員環構造になるか、もとのβ型六員環構造に戻ります。この五員環構造のほうもβ型なので気をつけてください。
フルクトース水溶液中では、β型六員環と鎖状構造とβ型五員環の3種類が共存し、これまた平衡状態になります。
β‐フルクトース (六員環) はβ‐グルコースと同じように見えますが、よく見ると足の向きが逆になっているのがわかると思います。
β‐フルクトース (五員環) は、右手がありません。
還元性あり。六員環構造。
グルコースの右手が上に上がっているバージョンです。それ以外のパーツはすべて同じ形をしています。β型はバンザイをしているように見えますね。
二糖類
一般式 :
・マルトース
別名麦芽糖。
還元性あり。
2つのグルコースが同じ向きに並んで、手を繋いでいます。ここで、左側のグルコースは、左手が繋がれていることによって下向きに固定されてしまうので、α型となります。2つのヒドロキシ基が繋がって水分子1つが抜けることによって生じる-O-結合を、グリコシド結合といいます。
(グリコシド結合はエーテル結合なので、🎀で表すほうが適切ですが、ごちゃごちゃするので、〇で表しています。ややこしくてすみません…ヒドロキシ基ではないので注意してください。)
一方、右側のグルコースは、左手が自由なので、α型にもβ型にもなれます。また、ヘミアセタール構造が残っているので鎖状構造にもなれます。
別名ショ糖。
いわゆる、私たちの身近にある 「砂糖」。
還元性なし。
α‐グルコース + β‐フルクトース (五員環)
フルクトースの繋がり方がちょっと難しいのですが、下の画像のように、両端を固定して、上側と下側をそれぞれ青の矢印の向きにぐにゃっと押し込んでいる感じです。
わかりやすいように上下2つにわけて描いているのですが、ぐにゃっと曲げているだけなので、原子の並び方は変わっていないということがわかりますか?曲げたあとももとのβ‐フルクトースと同じものです。
ただ、手に対して頭と足が入れ替わっているので、曲げたあとの右手は、「右についているけど左手」 な状態です。また、上下も反転しています。
つまり、このフルクトースがα‐グルコースと手を繋ぐとき、右手で下向きに繋いでいるように見えますが、実質左手で上向きなので、左手が上向きに固定される→β型、となるわけです。
グルコース側は、左手が下向きに固定されているのでα型です。
スクロースは、ヘミアセタール構造中のヒドロキシ基同士がグリコシド結合しているため、還元性を示さないのです。
別名乳糖。
生物選択者にはラクトースオペロンでおなじみ。
還元性あり。
グルコースが逆立ちをして、さらに背中向けになって、β‐ガラクトースに結合しています。
ガラクトース側は左手が上向きに固定されβ型ですが、グルコース側は左手が自由なのでα型,β型,鎖状構造のすべてをとることができます。
・トレハロース
還元性なし。
右側のグルコースは、スクロースにおけるβ‐フルクトースと同様に、ぐにゃっと曲げてから結合します。
そしてさらに、点線のところでパタンと前に倒れ、背中向けで逆立ちの状態です。
こちらも右手で上向きに結合しているように見えて、実質は左手で下向きなのでα型、そしてもう一方のグルコースも左手下向きのα型です。
還元性を示さないのもスクロースと同じですね。結合の仕方が非常によく似ています。
還元性あり。
ラクトースの左側にあるβ‐ガラクトースが、β‐グルコースになったバージョンです。
右側のグルコースは背中向け、逆立ちです。
多糖類
一般式 :
・デンプン
α‐グルコース × 大量
α‐グルコースが何千、何万と繋がった高分子です。私たちの主食、ご飯によく含まれていますね。
デンプンは、グルコース同士がグリコシド結合しているのですが、2箇所以上でグリコシド結合しているグルコースも存在し、枝分かれが生まれます。
枝分かれが少ない部分はアミロースと呼ばれ、温水に溶けます。
らせんを描くように結合し、グルコース約6分子で1周しています。
ヨウ素デンプン反応は、このらせんの輪っかの中に、ヨウ素分子がピタッとはまることによって呈色する反応です。
デンプンが一部分解されて少し短くなったものは、デキストリンと呼ばれます。
一方、枝分かれが多い部分はアミロペクチンと呼ばれ、温水に溶けません。
枝分かれが非常に多くなると、らせんが絡み合い、球状になっていきます。これをグリコーゲンといい、私たちの体内でデンプンはこの形で貯蔵されています。
β‐グルコース × 大量
β‐グルコースが交互に逆立ちしながら長ーく繋がった高分子です。植物の細胞壁に使われています。
こちらはらせんを描かず、直線状の構造です。
比較的丈夫で、レーヨンなどの繊維にも使われています。
さて、一通り紹介が終わりました。
糖類に親しみを感じていただけたでしょうか?
まだまだ付け加えたい情報はありますが、キリがないですし、私もテスト勉強をしなくてはいけないので(笑)、ここらで止めておきましょう。
化学は理論の分野も計算が難しい上に、無機と有機の分野では暗記に苦しまされ、なかなかつらい科目ですが、自分なりに工夫して、楽しく覚えていけたらいいですね!
最後に、今日登場したキャラクターのダイジェストを載せて終わります。
それでは、また!!
厳密さと便利さ
電卓ってすごいと思いませんか?
計算を劇的に速くしてくれます。電卓を使うたびに、人間はどうあがいてもコンピュータには敵わないんだなぁ、と思います。
もちろん、人間にできてコンピュータにできないこともあるわけですが。
電卓ってなんであんなに瞬間的に計算結果が出せるんですかね。機械に強くないので未だに謎なんです。
幼い頃の私は、「 」 「 」 ………って、あらゆる計算の結果が電卓の中に記憶されていて、それを表示しているんだと思っていました。
さすがに今は組み合わせの爆発性を知っているので思いませんが…(笑) ボタンを押す順番の総数なんて想像もつかない大きさになりそうですね。
さて、この前、私は電卓についてすごいことを発見してしまいました。いや、実は全然大したことないんですけど、まあ聞いてやってください。
世の中には2種類の電卓があるのです。というのは、同じ数式を入れても、違った計算結果になることがあるようなんです。
うーん、なんかショックじゃないですか?数学はその厳密さゆえに、どの方向からアプローチしても最終的には同じ結論に行き着くのが普通です。
全ての命題が1つの答えしか持たないわけじゃないので一概に言えることではありませんが、1つだけ正しい答えがある命題の場合はどんな方法で解いても同じ答えが出てきます。このすっきりした感じは数学の魅力の1つでもあり、多くの数学ファンを虜にしてきたと思うのです。
電卓を使って行う計算は、数字に何らかの演算をすることがメインとなるので、答えは1つに決まるはずです。ということは、「同じ数式を入れても違った計算結果になることがある」 ならば、必ずどちらかは間違っているわけです。
なぜ、間違った計算結果を表示する電卓が、電卓として使われているのでしょうか。
それは、数学としての厳密さよりも、便利さをとったからです。
逆に、便利さよりも厳密さをとった電卓は、使いやすさに欠けます。
ではそれは具体的にどういう電卓のことなのかを、以下に紹介します。
まず、「便利さ重視の電卓」 。
(例) 一般電卓
普通に売られている電卓です。最近は100円ショップでも売られていますね。こんなすごい機械が、100円以下のコストで作れるということでしょうか…驚きです。
小さいソーラーパネルみたいなのがついていて、そこから集めた光で動いているものが多いですね。
こんな感じの電卓です。
次に、「厳密さ重視の電卓」 。
Androidの電卓は、機種によって様々でとても可愛らしいデザインのものもあるようです。
関数電卓は、使ったことがないって人も多いかもしれません。とにかくたくさんのボタンがあって、複雑な計算をするのにもってこいです。
実は、スマホの電卓は、一般電卓かと見せかけて、関数電卓だったんですね。iPhoneの電卓を横に倒すと、関数電卓に早変わり。
サインコサインタンジェントや、指数の計算などができます。
※ Androidの電卓の中には、もしかしたら関数電卓ではないものもあるかもしれません。すべてのAndroid電卓が関数電卓であるのかどうか私のほうでは確認ができていないため、断言はできませんがご了承ください…。
さて、さっきから便利さだとか厳密さだとか書いていますが、それがどういう意味なのかまだ説明していませんでしたね。
計算には優先順位があります。細かく言うといろいろありますが、1番代表的な順序はやはりこれでしょう。
カッコ→乗除 () →加減 ()
これらが混ざっている計算においては、この順序で計算しなくてはならないのでした。これをしっかりと守ることが、先ほどから私の言う 「厳密」 です。
一般電卓と関数電卓の違いを知るために、まずは次の計算を電卓にさせてみましょう。
一般電卓の答え
答えが違います。数学的に間違っているのはどちらかと言うと、一般電卓のほうです。そう、一般電卓は、計算の優先順位を無視して、入力順に随時計算を行ってしまっています。
しかし、わざと間違った答えを出すはずはなく、メリットがあるからこそやっているわけです。
次の3つの数の平均を求めたいとします。
関数電卓を使う場合、入力する式はこうです。
または
(1度を押す)
(と、2回に分けて計算)
これが、一般電卓だとどうでしょう。
入力の手間を考えると、一般電卓のほうが適しているということがわかってもらえると思います。
入力順に計算が行われるため、一般電卓にはそもそもカッコを入力するボタンがないことも多いです。
いちいちを押して計算を区切ることなく、どんどん計算していけるのが一般電卓のメリットということになります。これは確かに 「便利」 ではないでしょうか。
平均を求めたいときをはじめ、5人で3個の品物を買って割り勘したいとき、税抜きの値段しか表示されていない4つの商品の税込みの合計金額を知りたいときなど、日常生活では掛け算・割り算をあとに計算したほうが都合のよいことが多々あります。
つまり、「掛け算・割り算は足し算・引き算よりも先」 というルールは、数学的に都合がよいからそう決められているだけであり、日常生活においてもそのルールが都合よく機能するとは限らないのです。
数学的に正しくない順序で計算を行う電卓が、広く用いられているのはこのためではないか、そして、「便利さ」 のために 「厳密さ」 を少し犠牲にすることも、状況次第では許されるのではないか、と私は思いました。
という訳で、世の中には2種類の電卓があり、私たちがよく利用するスマホの電卓は、基本的に関数電卓です。
使いやすい一般電卓ではないので、先ほどの3数の平均を 「 」 と入力してという間違った答えを出してしまわないようにくれぐれも気をつけてくださいね。
私たちは、自分で暗算をしたときには、「間違ってるかも」 と思って検算をしたりしますが、電卓に計算を任せたときには、電卓なら大丈夫だろうという信頼感で、結果が正しいかどうか確認しないまま大事なデータなどに使ってしまう可能性があります。
今後、電卓を使うときには是非、これはどっちのタイプの電卓だろう?と考えて使ってみてください。
ちなみに、日本には 「電卓検定」 というものがあるらしいですよ。いろんな検定があるものですね。
電卓って、思ったよりずっと奥が深そうです。関数電卓のボタンなんて、どういう計算をしてくれるのか全然わからないボタンがたくさんありますが、何か計算したついでに、ポチポチ適当にボタンを押して遊んでみると楽しいです。
みなさんも一度電卓のおもしろさを実感してみてはいかがでしょうか。
逆数を掛けると割ったことになるのはなぜ?
小学校のときに習った概念 「分数」 。
計算規則がややこしくて何度も練習しましたよね。
今回は、この分数の計算、特に割り算の話です。
ある数を分数で割るときに行う、「分母と分子をひっくり返して掛ける」 という操作がありますよね。どうしてこれだけで割り算ができてしまうのでしょう?
分母と分子をひっくり返して掛けるだなんて、もはや当たり前すぎて、気にも留めない人も多いのではないかと思いますが、ふとこんな質問をされたときに、きちんと答えることができますか?
当たり前に思うことほど、説明しようとしても意外とできなかったりします。どのように説明したら答えることができるのか考えていきましょう。
まずは、そうですね、いきなり答えを出すのは難しいですから、与えられた問いに対して部分的に答えを出すことはできないのか、と考えるのがひとつの方法です。
考えの道筋をざっと書いておきます。これはあくまでも一例で、私ならこうするというだけの話なので、正解はありません。
①そもそも、割り算とは何なのか?
②掛け算と割り算の関係
③逆数とは何なのか?
④補足 : 単位元のお話
⑤以上を踏まえて、まとめ
①そもそも 「割り算」 って何?
割り算とは、掛け算の逆演算です。それでいて、掛け算の一種であるとも言えます。
一種なのに逆??…おかしな話ですね。
②掛け算と割り算の関係
掛け算と割り算の関係は、足し算と引き算の関係と似ていると私は思うのですが、どうでしょう。
具体的に数字を使って考えます。
という式があるとしましょう。これは見ての通り、引き算です。これは、別の表記で表すことができます。
出てくる数字も計算結果もさっきの式と同じですが、これは引き算でしょうか。足し算と言ったほうがいいような気がしませんか?
このように、引き算というものは、 「負の数の足し算」 に変換することができます。これは引き算が足し算の一種であるという特性によるものです。
そして、このとき足す数というのは、最初に 「引いて」 いた数と、絶対値は同じで符号だけをマイナスに変えた数となっているのはみなさんご存知かと思います。 と は数直線の を基準として 「逆」 の位置にあります。そうです。これは引き算が足し算の逆演算であるから、ですね。
さて、これと同じような関係が、掛け算と割り算にも成り立つのです。同じといっても、そもそも、足し算と掛け算は本質的に違うものなので、関係だけに注目するということです。
という式があったとします。割り算の式です。これを、さっき引き算を足し算で表したように、掛け算で表そうと思ったら、どうすればいいでしょう?
を満たす数、 を探せばいいのですから、一次方程式ですね。両辺を で割りましょう。
これで、割り算を掛け算に変換することができました。
③逆数とは?
この とは、 に対してどんな関係のある数なのでしょうか。足し算のときは、数直線の を基準としたときに逆にある数を足せばよかったのですが、掛け算ではそうはいきません。
ここで、「逆数」 という概念の登場です。
逆数とは、ある数に対して、掛けて になる数のことですよね。これが、掛け算における 「逆」 なのです。
そして、この逆数こそが、分母と分子をひっくり返すという操作の原因となっています。
分数に、分母と分子をひっくり返した分数を掛けると、「約分」 がおきることにより、 しか残りません。整数も、分母を だと考えると分数の一種なので、ここでいう分数は整数も含んでいます。
逆数に関して、
「なぜ逆数は分母と分子をひっくり返した数になるの?」
と聞かれたら、私の答えとしては
「逆数の定義はある数に掛けると になる数で、分母と分子をひっくり返して掛けると約分が起きて になるから」
というものになります。
約分という操作が、分母と分子をひっくり返すという操作の鍵を握っているのです。括線 (分母と分子の間にある線のこと) の上と下に、同じ因数がなければ約分はできません。
よって、約分をするためには、上にある数を下に、下にある数を上に…すなわち分母と分子をひっくり返した数を掛けなければならないのです。
④単位元
引き算を足し算に直すには、「数直線上で ( から見て) 逆の位置にある数」 を足せばよく、
割り算を掛け算に直すには、「逆数」 を掛ければよい、ということがわかりました。
さっきから数直線上で逆にある数だなんて回りくどい書き方をしていますが、数直線上で から見て逆ということは、その つの数を足すと になるということです。
つまり、まとめると
・引き算→足し算 の変換
「ある数 」 を引く
→ 「 と足して になる数」 を足す
・割り算→掛け算 の変換
「ある数 」 で割る
→ 「 と掛けて になる数」 を掛ける
簡潔にまとまりましたが、ここで気になるのが、なぜ足し算は 、掛け算は が重要になってくるのかということです。
これには明確な理由があります。
足し算、引き算、掛け算、割り算の つを合わせて、「四則演算」 と呼びます。この言葉聞いたことある!って人も多いかと思います。基本的な つの 「演算」 ということですね。つまり、これらはすべて 「演算」 であるといえます。
演算には、その演算固有の 「単位元」 というものが存在することが多いです。たんいげん。
単位元とは、ある演算を考えたときに、ある数に対して演算しても必ずもとの数に戻る数で…っと、何を言ってるかわからなくなってきました。
具体的に数字で考えましょう。
まず、足し算の単位元について考えます。引き算は足し算の一種ですから、足し算として考えましょう。
「ある数」 として、例えばそれが であるとします。その数に、 「ある演算」 を行います。ここでは、それは足し算のことですね。
その計算結果が、必ずもとの数に戻る…つまり、 になるとき、何の数を足せばいいのかということです。
はいくらでしょう?簡単ですね。 です。
では、「ある数」 が ではなく、 や や だったら…?
それでも、計算結果がもとの数に戻るという条件を満たすのは、 ですよね。
これで足し算の単位元が求まりました。 です。簡単にいうと、「足しても足しても結果が変わらない数」 ですね!
では、次は掛け算の単位元です。もちろん、割り算も含みます。
足し算の単位元を理解したみなさんなら、具体例を出すまでもないでしょう。
「掛けても掛けても結果が変わらない数」 は?
そう、 です。掛け算の単位元は なのです。
これが、足し算にとって が、掛け算にとって が、なぜ重要なのかという理由になります。
ちなみに、足し算や引き算において、 を、 に対する 「逆元」 、
また掛け算や割り算において、 を、 に対する 「逆元」 といいます。
ある数に対して演算すると 「単位元」 になる数を、その数に対する 「逆元」 というのですね。
⑤まとめ
さあ、グダグダと長い道のりになってしまいました。まだ終わらないの?そろそろ疲れたよ!とお思いかもしれませんね。一気にまとめてしまいましょう。
なぜ分数で割るときには分母と分子をひっくり返して掛ければいいのか?
- 引き算を 「負の数の足し算」 と考えれば足し算に変換できるように、割り算も 「逆数の掛け算」 と考えれば掛け算に変換することができる!
- 逆数とは、分母と分子をひっくり返した数のこと。これは逆数の定義と、約分の関係でどうしてもこうなってしまう。
- ゆえに、「分数の割り算」 は 「分母と分子をひっくり返した数の掛け算」 に変換される!
…いかがでしょう?
いや、算数って本当に難しいですね。たかが算数、されど算数。おそるべし。
分数の割り算について、なんか引っかかるなぁと感じている人のモヤモヤを解消することを目的に書いたはずが…なんかしっくりこない回答になってしまったかもしれません。精進します。
今回、分数の割り算を考えるにあたって、引き算から足し算への変換と、割り算から掛け算への変換というのを、切り口として書いてきました。
引き算と足し算、それから割り算と掛け算というのは、本質的に似ている演算であるので、符号を変えたり、分母と分子をひっくり返したりと、比較的簡単に変換が行えました。
少し余談です。
ここで、「掛け算から足し算への変換」 と、「割り算から引き算への変換」 を考えたものが、高校2年生の数学IIで学習する 「対数」 なのです!
先ほども書きましたが、掛け算と足し算、割り算と引き算というのは、本質的に全く異なる演算なので、変換には複雑な新しい計算規則が必要になってくるというわけなんですね。対数が難しい理由はここにあります。
でも、対数は結局、掛け算から足し算への変換をしているだけなので、そんなに難しく考える必要はないのです。
この記事を通して、なにか疑問を感じたときには、細かく分割してシンプルに考えるのも大事だよということが伝わったのなら幸いです。
それでは、今回はこの辺で!