ぐるます

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厳密さと便利さ

電卓ってすごいと思いませんか?

計算を劇的に速くしてくれます。電卓を使うたびに、人間はどうあがいてもコンピュータには敵わないんだなぁ、と思います。

もちろん、人間にできてコンピュータにできないこともあるわけですが。

 

電卓ってなんであんなに瞬間的に計算結果が出せるんですかね。機械に強くないので未だに謎なんです。

幼い頃の私は、「 1+1=2 」 「 1+2=3 」 ………って、あらゆる計算の結果が電卓の中に記憶されていて、それを表示しているんだと思っていました。

さすがに今は組み合わせの爆発性を知っているので思いませんが…(笑) ボタンを押す順番の総数なんて想像もつかない大きさになりそうですね。

 

さて、この前、私は電卓についてすごいことを発見してしまいました。いや、実は全然大したことないんですけど、まあ聞いてやってください。

 

世の中には2種類の電卓があるのです。というのは、同じ数式を入れても、違った計算結果になることがあるようなんです。

 

うーん、なんかショックじゃないですか?数学はその厳密さゆえに、どの方向からアプローチしても最終的には同じ結論に行き着くのが普通です。

全ての命題が1つの答えしか持たないわけじゃないので一概に言えることではありませんが、1つだけ正しい答えがある命題の場合はどんな方法で解いても同じ答えが出てきます。このすっきりした感じは数学の魅力の1つでもあり、多くの数学ファンを虜にしてきたと思うのです。

 

電卓を使って行う計算は、数字に何らかの演算をすることがメインとなるので、答えは1つに決まるはずです。ということは、「同じ数式を入れても違った計算結果になることがある」 ならば、必ずどちらかは間違っているわけです。

 

なぜ、間違った計算結果を表示する電卓が、電卓として使われているのでしょうか。

 

それは、数学としての厳密さよりも、便利さをとったからです。

逆に、便利さよりも厳密さをとった電卓は、使いやすさに欠けます。

 

ではそれは具体的にどういう電卓のことなのかを、以下に紹介します。

 

まず、「便利さ重視の電卓」 。

(例) 一般電卓

普通に売られている電卓です。最近は100円ショップでも売られていますね。こんなすごい機械が、100円以下のコストで作れるということでしょうか…驚きです。

小さいソーラーパネルみたいなのがついていて、そこから集めた光で動いているものが多いですね。

こんな感じの電卓です。

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次に、「厳密さ重視の電卓」 。

(例) スマホの電卓、関数電卓

スマホの電卓はおなじみですね。これがiPhoneの電卓。

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Androidの電卓は、機種によって様々でとても可愛らしいデザインのものもあるようです。

関数電卓は、使ったことがないって人も多いかもしれません。とにかくたくさんのボタンがあって、複雑な計算をするのにもってこいです。

実は、スマホの電卓は、一般電卓かと見せかけて、関数電卓だったんですね。iPhoneの電卓を横に倒すと、関数電卓に早変わり。

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サインコサインタンジェントや、指数の計算などができます。

Androidの電卓の中には、もしかしたら関数電卓ではないものもあるかもしれません。すべてのAndroid電卓が関数電卓であるのかどうか私のほうでは確認ができていないため、断言はできませんがご了承ください…。

 

 

さて、さっきから便利さだとか厳密さだとか書いていますが、それがどういう意味なのかまだ説明していませんでしたね。

 

計算には優先順位があります。細かく言うといろいろありますが、1番代表的な順序はやはりこれでしょう。

カッコ→乗除 (\times,\div) →加減 (+,-)

これらが混ざっている計算においては、この順序で計算しなくてはならないのでした。これをしっかりと守ることが、先ほどから私の言う 「厳密」 です。

 

一般電卓と関数電卓の違いを知るために、まずは次の計算を電卓にさせてみましょう。

3+5\times 2=?

 

一般電卓の答え

3+5\times 2=16

関数電卓 (スマホの電卓を含む) の答え

3+5\times 2=13

 

答えが違います。数学的に間違っているのはどちらかと言うと、一般電卓のほうです。そう、一般電卓は、計算の優先順位を無視して、入力順に随時計算を行ってしまっています。

しかし、わざと間違った答えを出すはずはなく、メリットがあるからこそやっているわけです。

 

次の3つの数の平均を求めたいとします。

7, 15, 29

 

関数電卓を使う場合、入力する式はこうです。

(7+15+29)\div 3=

または

7+15+29=51           (1度=を押す)

51\div 3=                           (と、2回に分けて計算)

 

これが、一般電卓だとどうでしょう。

7+15+29\div 3=

 

入力の手間を考えると、一般電卓のほうが適しているということがわかってもらえると思います。

入力順に計算が行われるため、一般電卓にはそもそもカッコを入力するボタンがないことも多いです。

 

いちいち=を押して計算を区切ることなく、どんどん計算していけるのが一般電卓のメリットということになります。これは確かに 「便利」 ではないでしょうか。

 

平均を求めたいときをはじめ、5人で3個の品物を買って割り勘したいとき、税抜きの値段しか表示されていない4つの商品の税込みの合計金額を知りたいときなど、日常生活では掛け算・割り算をあとに計算したほうが都合のよいことが多々あります。

 

つまり、「掛け算・割り算は足し算・引き算よりも先」 というルールは、数学的に都合がよいからそう決められているだけであり、日常生活においてもそのルールが都合よく機能するとは限らないのです。

 

数学的に正しくない順序で計算を行う電卓が、広く用いられているのはこのためではないか、そして、「便利さ」 のために 「厳密さ」 を少し犠牲にすることも、状況次第では許されるのではないか、と私は思いました。

 

という訳で、世の中には2種類の電卓があり、私たちがよく利用するスマホの電卓は、基本的に関数電卓です。

使いやすい一般電卓ではないので、先ほどの3数の平均を 「 7+15+29\div3= 」 と入力して31.666...という間違った答えを出してしまわないようにくれぐれも気をつけてくださいね。

私たちは、自分で暗算をしたときには、「間違ってるかも」 と思って検算をしたりしますが、電卓に計算を任せたときには、電卓なら大丈夫だろうという信頼感で、結果が正しいかどうか確認しないまま大事なデータなどに使ってしまう可能性があります。

今後、電卓を使うときには是非、これはどっちのタイプの電卓だろう?と考えて使ってみてください。

 

ちなみに、日本には 「電卓検定」 というものがあるらしいですよ。いろんな検定があるものですね。

 

電卓って、思ったよりずっと奥が深そうです。関数電卓のボタンなんて、どういう計算をしてくれるのか全然わからないボタンがたくさんありますが、何か計算したついでに、ポチポチ適当にボタンを押して遊んでみると楽しいです。

 

みなさんも一度電卓のおもしろさを実感してみてはいかがでしょうか。